子どもの即興

テレビで見たチェコの鉄道の旅でのお話。

歌う旅人の通路を隔てた席で女の子が楽しそうに歌っています。お母さんが「この子はいつも自分の“即興”で作った歌をうたうの」と旅人に話します。「こっちへ来て歌って!」とお願いすると、すっと旅人の横に来て、それでも恥ずかしそうに背を向けちょこんと座ります。そして、♪あなたならだいじょうぶ きっとできるわ~♪とかわいい声で素敵なメロディーにのせて歌いました。

お母さんがいつも語りかけ励ましている身体と心にしみ込んだ言葉が、この子の中からほとばしるように出てきているようでした。

子どもたちは、自分に語りかけられる言葉ばかりか、日常の中で交わされる周りの人たちの目には見えない心、ただよう雰囲気までも身体にしみ込ませていきます。

旅人は、感心しながらも、その女の子の心を横で静かに受け取っていました。
“即興”で遊ぶ子どもたちの“ごっこ遊び”でも、「お母さんの真似かしら?あの先生の言い方だわ」と生活を共にする人とのかかわりで自分の中にしみ込ませた言葉を交わしているのをよく耳にします。子どもが言葉や身体で表現する“即興性”は、日ごろ培っているものから来るのかなと考えます。私たちはどんな言葉を語りましょうか、何を伝えましょうか。女の子の歌に、私自身が問われた気がしました。

久しぶりにのぞいたこひつじグループのMちゃんが、先生に読んでもらったばかりの絵本を、私に読んでくれました。先生の読み方そっくりに読むMちゃん。朝からほっこりと嬉しい気持ちになりました。(副園長)