
第十三回「日本語の基礎Ⅰ」 授業担当:播磨 桂子先生(11/08/02)
哲学の先生 Eの音は、下顎を上顎に近づけることによってつくられる。A、E。ジュールダン氏 A、E、A、E。まったくだ。ほんとに、大したもんですな!
哲学の先生 Iの音は、二つの顎をなおも近づけ、口の両端を耳のほうに引っ張る ことに
よってつくられる。A、E、I。
ジュールダン氏 A、E、I、I、I、I、I。ほんとだ。学問万歳!
(モリエール作、鈴木力衛訳『町人貴族』岩波文庫)
日本語を母語とする人にとって、「サラダ」という語を発音するのは造作もないことですが、「サ」「ラ」「ダ」それぞれの音を、どのように発音仕分けているのか説明するのは、意外と困難なのではないでしょうか。「日本語の基礎Ⅰ」では、おもにこの日本語の音声のしくみを取り上げて学んでいます。
冒頭の引用文は、フランスの劇作家モリエールの戯曲『町人貴族』。富裕な町人のジュールダン氏は貴族にあこがれ、教養を身につけようと、ダンス、音楽、哲学のレッスンを受けます。哲学の先生がジュールダン氏にフランス語の発音についてレッスンするくだりは、まさに「日本語の基礎Ⅰ」の教室再現のようです。
しかしながら、単純なジュールダン氏と違って冷静沈着な学生たちが「学問万歳!」と感激することは、まずありません。「鼻音というのは、鼻をつまむとうまく発音できない音ですよ。やってみてください。」と説明しながら、鼻をつまんで「mmm」とやっている私を珍しい生き物でも見るかのように見つめていたりして...。
たしかにここはまだ「学問万歳!」と叫ぶところではないでしょう。ただ、こうやって基礎として学んでいることが、何年か後の「学問万歳!」に少しでも役に立てばいいな、とささやかに願っているのです。





















