
「源氏物語ものがたり」(島内景二・新潮新書) 紹介者:安道百合子(10/05/07)
紹介者:安道百合子 )
大学生になって、『源氏物語』を読破しようと思っている学生さんは少なくないでしょう。「梅光学院大学 学生生活ガイドブック」のなかに「魂にビタミンを」というページがあります。教員お薦めの本が並べられているなかに、私は『源氏物語』を紹介し、こう書きました。「原文でも、訳文でも、どこから読んでも、何度読んでも楽しめます」
昨今では、さまざまな『源氏物語』に近づくための本が出版されていますが、それらの本の一冊にぜひ加えてほしいのが、この本です。
これは、「『源氏物語』を愛した人たちの物語」(本書19ページ)なのです。
源氏物語は千年の長い期間読み継がれてきた物語です。原文でぜひ読んでほしい、と私も授業で言います。けれど、原文で読むということは、なかなか難しいことでもあります。かくいう私も、原文で読めているかと問われれば、自信はありません。
私たちがいま『源氏物語』を読むことができるのは、多くの先人の業績があるからでもあります。本書には、そんな先人の「ものがたり」が書かれています。『源氏物語』を読み解く個人の営みの連鎖、研究の全体を、昨今の言い方になぞらえて「源氏物語プロジェクト」と称すなら、それは八百年の長きにわたって続いてきました。個人と個人の直接の会合がなくとも「時空を隔てた一種の共同研究のようにも見える」ものです。そうした個人の成果の積み重ねがあって、いま、私たちは『源氏物語』を読むことができるわけです。
源氏成立から200年後、本文を定め「古典」としての地位を与えた藤原定家。南北朝期、語義を追求し、モデルを探した、四辻善成。合理主義者で、『源氏物語』の構造も文章も分類整理して理解しようとした一条兼良。以下、宗祇・三条西実隆・細川幽斎・北村季吟・本居宣長・アーサーウェイリー・・・と続きます。『源氏物語』読者(研究者)としての彼らの姿だけでなく、彼らの生きた時代、彼らの性格、生き様がわかりやすく説かれているのも本書の魅力でしょう。『源氏物語』にはさほど興味のない人でも、彼らのさまざまなアプローチの仕方に面白さを感じることと思います。
「古典とは時代を超えて私たちに迫ってくるもののことである。また古典とは高く仰ぎ見られる遺産というよりも、日常生活のいちばん底にはたらきかけてくるものでもある。」(藤岡忠美『紀貫之』講談社学術文庫14頁)という言葉があります。古いもの、むずかしいものと敬遠しないで、彼らに刺激を受けて、「源氏物語プロジェクト」に参加してみませんか。
































