第5回全国「高校文芸誌(及び文芸創作)」コンクール選考結果発表
「高校文芸誌」部門個人作品部門選考委員の講評と感想高校文芸誌コンクールTOPへ

第5回「高校文芸誌(及び文芸創作)」コンクールについて

「いついつでやる♪」

選考委員長 村中李衣

  開学130周年を記念して梅光学院が始めた全国「高校文芸誌(及び文芸創作)」コンクールは、今年で第5回を迎えることとなりました。 北は青森や岩手から南は沖縄まで、全国各地の高等学校から77校112誌、掲載作4495作品が寄せられました。 選考の結果、入選作品は下記のように決まりました。
  昨年の倍近い作品との出会いがあった今回のコンクールですが、でも、じゃあ、多くの「高校生に出会った」かというと、その印象は薄いのです。 ひとりの人が複数の作品を提出しているからということでなく、なんだか、世間をにらんで、自己を強烈に表現してやろうとする、高校生たちの顔がみえにいということです。 作品一つ一つについても、「雑誌」についても、そう感じられました。 ちょっと要求度が高いかもしれませんが、雑誌としての個性を出すための「企て」の後ろで、部員が各自の「書く」ことの巧さに安住しているような、その結果「企て」の成功が「巧さの凝縮図」に収まってしまっているような……このことに、わが梅光学院の審査メンバーはどのような評価を与えていくべきか、大いに揉めたことでした。 「高校生でここまでいけばなかなかのものだ」「読後感だって心地よい」「今や普通の学生が見向きもしないようなテーマに真摯にとりくんでるわけだからそれだけだって十分評価に価するんじゃないか」という見方と「高校生だからこそ、私たちの心地よさゾーンを打ち破って見えないものを突きつけてくるエネルギーがほしい」「着地に向けて小器用にまとめていくことに、ここで拍手をおくってはだめだ」という見方。審査会場の白熱する論議のあいだじゅう私の頭の中は「♪かごめかごめ」でした。「夜明けの晩」に「駕籠の中の鳥」を飛び放たせる「うしろの正面」の君の顔を、作品の中に、くっきりと見たい!「いついつでやる」なんていわず、来年を待ってます。

TOP
「高校文芸誌」部門
最優秀奨励賞
文芸誌名
高校名
紫苑 第39号
仙台白百合学園高等学校
優秀奨励賞
文芸誌名
高校名
いさらゐ 第47号
筑紫女学園高等学校
寂光 H 福島県立湯本高等学校
桐光学園文藝部誌 第玖号 桐光学園高等学校
佳 作
文芸誌名
高校名
若菜 第5号
福井県立若狭高等学校
響 第6号 福岡県立若松高等学校
K.N.C.T. 第8号 国立呉工業高等専門学校
新しき朝の光 長崎県立川棚高等学校
硬 44号 福岡県立嘉穂高等学校
梅光学院大学文芸部賞
文芸幸田 第8号 愛知県立幸田高等学校
TOP
個人作品部門
分類
作者名
作 品 名
県名
高校名
文芸誌名
最優秀作品
下関市長賞
小説
武中宇紗貴 空のはらわた 宮城 仙台白百合学園高等学校 紫苑 第39号
最優秀作品
梅光学院長賞
福島眞希 首振り人形 福岡
福岡県立若松高等学校 響 第6号
最優秀作品
佐藤泰正賞
企画
(代表)
飛鳥
長崎街道・彼杵の宿を訪ねて 長崎 長崎県立川棚高等学校 新しき朝の光
優秀作品賞
小説
止水 かなしみミシェール 岐阜 岐阜県立大垣北高等学校 木霊 2年
優秀作品賞
染井吉野 赤のペディキュア 広島 清水ヶ丘高等学校 ましみず
優秀作品賞

武内朋美 法則 宮崎 宮崎県立宮崎大宮高等学校 空前絶後
優秀作品賞
月兎 よるとつきのセカイ 広島 広島県立広島観音高等学校 海溝 74号
優秀作品賞
細田雄大 散歩 岩手 岩手県立盛岡第三高等学校 黎 vol.5
優秀作品賞
及川祐依 現代言語哲学 宮城 仙台白百合学園高等学校 紫苑 第39号
優秀作品賞 俳句 佐藤 博 やまぶき色 福島 福島県立磐城高等学校 磐高文学 第62号
優秀作品賞 企画 (代表)
菅原喬史
文芸部員が訳す、百人一首 広島 国立呉工業高等専門学校 K.N.C.T. 第8号
優秀作品賞 企画 (代表)
岡本亜利沙
宮沢賢治『よだかの星』 ほか 神奈川 桐光学園高等学校 桐光学園文藝部誌 第玖号
佳作 小説 大渡康允 A-38 大分 大分県立大分上野丘高等学校 青窓 72
佳作 小説 香月晴季 あおぞらかみひこうき 岐阜 岐阜県立大垣北高等学校 木霊 2年
佳作 小説 宮片瑠璃音 砂嵐の絵 山口 山口県立華陵高等学校 Who's That? Vol.22side-A
佳作 小説 朱月燈灯 山口 山口県立華陵高等学校 Who's That? Vol.22side-B
佳作 小説 大谷綾子 夕映え鬼神 福岡
筑紫女学園高等学校 いさらゐ 第47号
佳作 湯三郎 ぬけがら 山口 山口県立下松高等学校 波濤 57号
佳作 卯月 吟游迷歌 愛媛 愛媛県立松山北高等学校 たぎり 第63号
佳作 守宮竜子 仮定円周率 広島 広島県立広島観音高等学校 海溝 74号
佳作 クロッカス beat 愛媛 愛媛県立松山北高等学校 たぎり 63・5号
佳作 植田裕子 夏至 福岡 福岡県立若松高等学校 響 第6号
佳作 高尾実咲希 わたしの中には壁がない 福岡 福岡県立八幡南高等学校 螺旋軌道 第9号
佳作 浦崎みく 三角公園 岐阜 岐阜県立大垣北高等学校 木霊 1年
佳作 小林勇貴 あるタンポポの出来事 福岡 福岡県立嘉穂高等学校 硬 44号
佳作 耶昴輝琉 落ち葉 広島 清水ヶ丘高等学校 ましみず
佳作 大賀愛理沙 紫陽花精神 福岡 筑紫女学園高等学校 いさらゐ 第47号
佳作 池田 愛 真夜中の街 福岡 筑紫女学園高等学校 いさらゐ 第47号
佳作 短歌 武中宇紗貴 わたし・吾・わたし・俺 宮城 仙台白百合学園高等学校 紫苑 第39号
佳作 短歌 波場天狼 静かな休日に 大分 大分県立大分上野丘高等学校 Etude クリスマス号
佳作 企画 山本由貴 聞き書き 福岡 福岡県立若松高等学校 響 第6号
佳作 企画 (代表)
新妻玲央
普通じゃない夢をもつこと 福島 福島県立湯本高等学校 寂光 H
TOP
選考委員の講評と感想

村田喜代子(本学教授 作家)

 「小説を書くことはもう一つの模擬世界を作るのと同じで、大げさにいえば天地創造なのである。」
  上の文章は前年のコンクールの選評で、私がすでに書いたものだ。けれどもまたそれを言いたい。
  小説が自分一人でやる天地創造の仕事なら、作者は全能なのである。 ちっぽけな自分が創造主になるなんて、文芸や美術、音楽などの世界でなければできないことだ。 せっかくその機会を得るのだから、小説の機能を使いきって書ききってほしい。 器用にまとめて作品の世界を小さくするよりは、果敢に挑戦したおおいなる失敗作を出してほしいと思う。
  そこで今回の小説部門では、最優秀に武中宇紗貴さんの『空のはらわた』を選ばせてもらった。 よくこんなストーリィを思いついたと感心する。時代は先頃の戦争が始まる直前という設定。 これだけでも変わっている。作者はこの若さで世の中の仕組みの苦さを実感で知っている。 だからそれを書くのに青臭い印象がないのだ。 したたかだ。空にむかつく、という言葉がまっとうに響いてくる。 ラストの空からはらわたがドカ雪のように落ちてくる場面は狂的でシュールで圧巻だった。 太さと繊細さを併せ持っているが、一点の注意として、今後、ペダントリーに傾きすぎないように進んでほしい。
  次に優秀作として止水さんの『かなしみミシェール』を取った。 この作者にはもう一遍、『牛鍋』という変わったタイトルの作品があるが、両作併せ読んでも、文章の感性に優れていることがうかがえた。 ことに『かなしみミシェール』の海の描写、セリフの鋭さ。ラストで恋人ミシェールが何者なのか、アッと息を呑ませるところも秀逸だ。 『空のはらわた』が型破りでダイナミックなら、こちらはナイーブで洗練された都会型といおうか。 一作ごとに成長していける人だろう。
  佳作の筆頭は大渡康充さんの『A−38』だ。 今、改訂で大波紋を呼んでいる臓器移植法を衝いた作品である。 心臓の停止をもって死としてきた長い歴史が、今、覆されようとしている。 停まってしまった心臓は使い物にならない。しかし動いている間は死人とみなせない。 そこから脳死の概念が生まれたわけで、この作品では臓器移植用のクローン人間が作られる。 はじめから脳のない人間なのだ。脳がないので、生きながら死人として臓器を抜き取られる。 短編のため筋立ては粗いが、この奇怪なクローンという生き物を、人命救助のために血液センターから送られてくる輸血パックや、人が食うために肥らせる家畜や畑で栽培する野菜と同じだと言う医者の話など鋭い。 作品枚数は少ないが、参考文献等、下調べに時間をかけたことがわかる。文学は常に生と死について思う領域だ。 脳死論を根幹にした臓器移植の問題を、高校生がここまでのストーリィの上に具体化し、場面に血肉化したことを褒めたい。
 宮片瑠璃音さんの『砂嵐の絵』、朱月燈灯さんの『綸』は地味ながら、作者ならではの味わいの短編世界を描いた。 香月晴季さんの『あおぞらかみひこうき』は文章は安定してそれなりの世界を持っているが、この冒頭に述べたことを読み直して考えてほしい。 同じ作者のもう一つの作『天を焦がす紅蓮の華』は太平洋戦争時の軍医と特攻隊の話だが、こう書くと間違いないという安心した書き方を選んでいないだろうか。 こういうテーマは小説に映画にとすでに書き尽くされた。それを今、若い作者があえて書くにはどんな表現形式をとるか。 ラストの一行、「ある、一つの魂が今、天へと還った。」というようなものではないはずである。
  大谷綾子さんの『夕映え鬼神』は趣味の文芸作品として見るなら、大変上手で文章力もある。 長編を書く力もある。だがこの人ももう一度冒頭を再読してほしい。 あなた方の年齢なら昔語りの世界でなく、もっと現実世界をドキドキと感じられるはずだ。 世界や人間、もろもろの現代の命題にも切り込んでいってほしい。 若者が感じることはまだ別の形でも一杯あるはず。昔語りがよくないというのではない。 昔語りの世界にテーマをまとめこむ行為に、どこか安心の気持ちが潜んでいるのではないかと思うのだ。
  みなさんの果敢なる失敗作を待っている。


小林慎也(本学教授 ジャーナリスト)

  文芸誌部門では、企画性に優れた高校が上位を占めた。「紫苑」(仙台白百合学園)、「いさらゐ」(筑紫女学園)、「寂光」(福島県立湯本)、「桐光学園文藝部誌」の4冊はそれぞれ、部員全体の総合力と集団による共同作業が独自な企画を生んだ。
  個人作品の小説部門は、発想、構成、表現のいずれに重きを置くかで悩んだが、武中宇紗貴さんの「空のはらわた」が抜きん出た。「はらわた」のイメージと荒々しい力感に圧倒された。 止水さんの「かなしみミシェール」は、しなやかな感性と何とはない欠落感を感じさせる。 宮片瑠璃音さんの「砂嵐の絵」と朱月燈灯さんの「綸」は、いずれも小品だが、読後感がさわやかだった。
  俳句部門では、「磐高文学」佐藤博さん「やまぶき色」の三十一句。季感とものの取り合わせがみごと。 「空缶を蹴る少年や雲の峰」「本堂の馬の屏風や夕桜」「炎天や九回裏のエースの背」。


北川 透(本学教授 詩人 文芸評論家)

普通でも特別でもないことばと生活 ――現代詩の分野を中心に

  福島さんの「首振り人形」は、特に四連、五連がいい。 普通でも、特別でも、異常でもない、この人の高校生としての生活スタイル、自己主張がよく出ている。 それはまた、詩のことばや書き方の特徴でもある。何遍も読みたくなる。 考えさせられる。凄いことだ。染井さんの「赤のペディキュア」も率直な語り口がよかった。 ワタシの爪だけでなく、アナタの爪にもペディキュアを塗る。もはや二人の間で、爪は爪であって爪ではない。 そこがよく書けている。武内さんの「法則」にも驚いた。 詩とはもっとも遠いことばのように思える〈法則〉を、これだけ多用して、一篇の詩にすることが出来たのは、本来、法則ではない変な法則、おかしな法則を〈法則〉にしてしまったからだ。 今年の上位に選ばれた作品は、自分のことばがより深いところで、読む者に届くように工夫して書かれていた。


宮崎勝弘(本学教授 ジャーナリスト)

  高校生の作品を初めてまとまった形で読み、芥川賞作家・柳美里氏が「書くことは恐ろしい日常でしかない」と言っているのを思い出した。
小説では、「重っ」「でかっ」「まじかょ」「〜てーか」「うざい」といった言葉が目立った。言葉に流行があり、その先端部を若者が担っていることを差し引いても、作品の中でこれらの表現が成功しているとは思えない。 さらに気になるのは、言葉もさることながら作品のパターンが似ていて、読みつつも結末がある程度、予測できてしまうことだ。
  そうした中で、「空のはらわた」は文句なく面白かった。「砂嵐の絵」「綸」は、学園生活を舞台にしながらも流行語をあまり登場させずしっかりと書きこまれ、その分、思いが伝わってきた。 また、「あおぞらかみひこうき」は心地よく読んだ。若い諸君の、日常性を射貫くような、表現手法と格闘した作品を期待したい。


島田裕子(本学教授 歌人)

  このコンクールも第五回となり、短歌や俳句といった定型詩の創作が、多くの高校文芸誌に広がり定着してきた。 その為、短歌・俳句の「詩」としての精度がより問われることとなった。
  福島眞希さんの詩「首振り人形」は、女性になることへの拒否と自我へのこだわりを基底にした構成力の優れた詩であった。 残念ながら、今回これに拮抗するような短歌・俳句はなかった。 しかし、川棚高校の紀行文「長崎街道・彼杵の宿を訪ねて」は、文章と短歌に現地取材による発見や躍動感があり新鮮な企画であった。 武中宇紗貴さんの短歌「わたし・吾・わたし・俺」は、17歳特有のざらざらした生の感触を捉えだす語り口が魅力的。 佐藤博さんは短歌より俳句「やまぶき色」のほうが優れている。波場天狼さんの「静かな休日に」は言葉の選択に鮮やかさがあるが、さらに細部を見つめ独自の発見を短歌にしてほしい。


村中李衣(本学教授 児童文学作家)

ごろりと胸のそこにのこるもの

  今年は、昨年にもまして、若い不慮の「死」を、美しく扱った作品が多く見受けられました。 生の豊穣さの中にあって、「死」を想いあこがれるということはある意味自然なことですが、そのまなざしがあまりにも幼く掘り下げが甘いことに怖さをかんじます。 負の美しさに酔ってしまわないこと、そして軽妙な自分の筆運びに酔ってしまわないこと。 その意味で、『A−38』に注目しましたし、『空のはらわた』は、ごろりとした質感のある感情を読み手に呼び起こさせ続け、圧巻でした。

加藤邦彦(本学講師 日本近・現代文学研究)

  今回も多くの文芸誌を拝見しました。今回目立った特徴のひとつに、同じ文芸部が年に何冊も雑誌を刊行している、ということがあります。 中には年に6冊も刊行している文芸部もあり、その情熱とエネルギーには眼を見張るばかりです。 年に何冊も発行することは、創作活動の修行になりますし、部の宣伝にもなりますからいいことなのですが、ただ、そのことで力が分散してしまったり、無理をしすぎて雑誌のレベルが下がってしまわないよう注意する必要があります。 年何冊かの発行がうまく活かせている学校は、あまり時間をかけずに製作する雑誌と、たくさんの部数を発行する活動の中心となるような雑誌を区別するなど、雑誌製作の力の入れ具合を工夫しているようです。 もちろん、最初から年に1冊だけ出す雑誌に全力を注ぐという手もあるわけです。どのぐらいのペースで年に何冊ぐらい雑誌を発行するのがよいか、自分たちの年間活動スケジュールと照らし合わせながら考えてみてください。
  評価の高かった雑誌は、いずれも編集がしっかりしているほか、企画に工夫がありました。 その中で最優秀奨励賞に輝いた「紫苑」は、雑誌全体のテーマが一貫している点やキャッチコピーの使い方が光っていました。 最優秀作品の「長崎街道・彼杵の宿を訪ねて」は、自分たちと関わりの深い土地を実際に歩きながら短歌を詠む、オーソドックスな紀行文ですが、とても臨場感があり、読みごたえのある内容でした。


梅光学院大学文芸部 学生代表

『文芸幸田』 第8号

  今回も、全国から数多くの文芸誌が送られてきました。 その中で、この冊子はまるで原石のようでした。 内容や文章は荒削りですが、小説の一文、詩の一節、短歌の一単語、それらにきらりと光るものを感じました。
  それだけに、漢字の変換間違いや改行ミスが目立ちます。 それが、折角の作品の魅力を半減させていて、誠に残念です。 書いて終わり、ではなく、一度読み返してミスがないかチェックした方がいいと思われます。
  良い原石をたくさん持っていますので、どうぞそれを磨くことに力を尽くして下さい。 この賞を糧として、よりよい成長を遂げられることを願っています。
TOP