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川上未映子さんの講演を聞いて
 
 10月31日、大学の学祭が行われました。アルスでは開設10周年を記念して、作家の川上未映子さんを招き、特別講演会を開きました。
  講演を聞いた日本文学科1年生の学生より感想が届きましたので、その一部を要約してご紹介します。
 「根拠のないことに本気になって生きている」。そんな川上さんの言葉を聞いて、あぁそう言われてみるとそうだな、と思いました。
 
  人を殺してはいけない。人の物を盗ってはいけない。友人とケンカをしてはいけない。そうした根拠の、理屈のないことは数えあげればキリがない。それなのに、そんな事を本気にしている。ムリに正当化しようと、それっぽい事を口にするのは何故だろう。(略)
 
  人の心は常に揺らいで流されやすい。そうした心をつなぎとめるための、根拠と理屈ではないか。悪い言い方になるだろうが、人の心は暴れ馬のようなものだ。行きたい所へ行こうとし、気に食わない相手は振り落とす。自由と勝手な心を抑えるための手綱が、世間一般の常識というやつなのだろう。そうして誰もが飼い慣らされる。
 
  根拠も理屈もこえた所にあるものを見つけ、いつかそれを表現できるようになりたいと私は思います。
 
 川上未映子さんに実際にお会いしてみてお話を聞き、最も心に残ったのは、「どうして『青』という漢字は青くないのか」という言葉だった。こんなにも印象に残ったのは、幼い頃似たようなことを考えていた所為かもしれない。私は小さい頃、どうしても理解出来なかった。なぜなら「空」という漢字には、青空もなければ雲も星もない。それはまた、「空気」や「風」である。(略)

  こんなことについて深く考えたことは、少なくとも学校に入ってからは殆どなかった。しかし折角文学を探求し、文章を書くことを主とするコースのあるこの大学に入っているのだから、私に与えられたこの環境を最大限に活かしたい。ひとまずは、空を見上げて、どうしてコレは「そら」というのかじっくり考えてみたいと思う。
 
 講演の内容は、川上さんが人生を通して感じた違和感、それから発展して思い至った考えについて、であった。彼女の人生、特に子供の頃に感じたものに対して、とても共感する箇所が多くあった。沢山の違和感、もしくは疑問を持っていたはずなのに、成長していくにつれて、無理矢理納得していかざるを得なかったということ、自分の抱いている感情や語彙をほとんど持っていない為に、周囲に伝えることができず、異なる解釈を与えられてしまうことでもどかしい思いをしたことなどが共感したものの一例に挙げられる。

  川上さんも仰っていたように、文字はどんなもの、できごとも表現できるのだ。そうであるから、あの頃に抱いた違和感や疑問を表現することができる。よくよく考えてみれば私の創作に対する欲求は、そこから来ているということに思い当たった。川上さんは、そのことを明確に受け止めていらっしゃるようだったので、やはり素晴らしい方なのだと感じた。
 
 川上未映子さんの幼少のお話を聞くと、「なぜ?」と考えることが多かったと言われる。自身の幼少を思い返した時、私は確かに自分の周りの世界に対して疑問を抱き、「なぜ〜なのだろう?」と考えていたはずだった。だが、年が経つにつれ、いつしか常識として諦めてしまったように思う。世界に対して疑問詞を持つということは、異端に思えることなのかもしれない。だが、そうして考えることは、物語を作っていく上で必要なものであるのかもしれないと、今回の講演で感じることができた。
 
 

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