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    さぬき杯頂上決戦! コシのすわった最高のイケ麺はどっちダ!?   
 
 時は2007年。アルス運営委員会に、奇遇にも香川県人2名が在籍しているとの事実が判明。にわかにうどん魂が燃え上がり、ここに東西讃岐うどん対決と相成りました。さて、結果はいかに!?
 
東讃(香川県東部)

 
(店   名)  八十八庵(やそばあん)
(道 案 内) 
高松琴平電気鉄道・長尾駅より車で約20分 or 大川バス引田線「JR高松駅」で乗車、「大川バス本社前」でコミュニティバスに乗り換え、「大窪寺」下車すぐ。
(連 絡 先)  香川県さぬき市多和兼割93−1/TEL 0879−56−2160 FAX 0879−56−2163
(定 休 日)  年中無休
(営業時間) 8:00〜17:00
 
 東讃に美味いうどん屋は数々あるが、中でも推したいのはここ「八十八庵」。当店は、弘法大師の足跡を基にした四国八十八ヶ所の結願所である大窪寺に近く、道すがら、お遍路姿の人々を幾度となく見かける。屈強な体格の青年。必死の面持ちで、しかし着実に歩みを進める、線の細い学生風の男の子。彼らにエールを送りながら、こちらは自動車で楽々と山道を登り、店に到着する。

  腰を落ち着けると早速、店の人気メニュー「打ち込みうどん」(一人前750円)を頂く。打ち込みうどんとは、田植えや稲刈り後に、家にある野菜を利用して食されてきた当地の郷土料理だ。昆布とカツオの風味豊かな出汁は優しい味噌味、ぴりりと効いた柚子山椒がアクセントを添える。つやつやモチモチの麺には味がよくしみており、なお且つ讃岐うどんの命であるコシをしっかり保っている。うどんの下からは、じっくり煮込んだ大根・にんじん・里芋・ごぼう・豆腐、豚肉に油揚げといった具がごろごろ出てきて、ほくほくと美味い。うどんは喉越し良くつるつる入り、野菜の旨味が加わった出汁は思わず飲み干してしまう。秋も深まる中、山道で冷えていた体にじわりとしみ込む一品だ。 
 香川産の小麦粉を100%使用した麺・無農薬野菜・自家製味噌など、材料を厳選する店長・井川さんの一番のこだわりは、大窪寺の裏山に湧く水。水道水より温度が低い地下水は麺のしまりを良くし、麺ゆで・出汁取りとあらゆる場面で活躍する。伝統的な作り方に改良を加え、うどん投入のタイミングを変えることでコシを保つ工夫がなされている。店頭で販売している手作りのコンニャクも、噛みしめるほどにしみじみ旨く、お土産に最適。

  八十八庵の真向かいでは、大窪寺が優しい佇まいを見せている。早くから女性の入山を許したため「女人高野」の名を冠し、暖かな包容力と因習に捉われない強さを併せ持つ。弘法大師ゆかりの地で、庵のうどんに舌鼓を打ちながら、「うどんは空海が唐から伝えた」という伝説と遊ぶのも一興だ。
                                           三浦誉史加 (イギリス文学)
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西讃(香川県西部)

 
(店   名)  宮武うどん
(道 案 内) 
土讃線琴平駅より車で7分。(国道319号より県道47号との交差点を東へ約1km)
(連 絡 先)  香川県仲多度郡琴平町上櫛梨1050−3/TEL 0877−75−0576
(定 休 日)  水曜
(営業時間) 9:00〜15:00(※売切次第閉店)
 
 「えっ、いまさら宮武? ど○ちの料理ショーにも出た有名店なのに」−と讃岐うどん通の面々からは叱られそうだが、今回の対決、やはり西讃の雄「宮武」は外せない。確かに「ちょっとお昼にうどんでも」などと軽い気持ちで出かけると、あまりの長蛇の列に一瞬、ひるんでしまう店ではある。勿論、休日の駐車場には県外車がぎっしり。「釜玉」の名を全国に知らしめた「山越」よりは幾分マシとはいえ、讃岐っ子が帰省して久しぶりに美味いうどんをと思っても、1時間行列に並ぶ覚悟なしでは最早故郷の味にはありつけないのである。

  2007年9月某日、今日もやはり駄目なのか? と恐る恐る店に近づいてみると、なんという幸運、平日の閉店間際を狙ったのが功を奏し即入店。「良かった!」と安堵するや、すぐに「食べるもんここに書いてください」との声が。そう、ここは香川ならではのセルフ店。客自らが注文用紙(という名のメモ紙)に食べたいうどんを書いて注文するシステムなのだ。急ぎ、メニューに目を走らせ「ひやあつ小1」と書き込む。初めての方はここでご注意。「ひやあつ」とは冷たい麺に熱いダシをかけたうどんのことで、この店では、麺とダシの温度の組み合わせで「あつあつ」「あつひや」「ひやあつ」「ひやひや」という4つのタイプのうどんが楽しめるのである。

  勿論、しょうゆうどんや湯だめといった讃岐うどんの定番メニューもある。続けて「しょうゆかけ小1」を書き込んだら、テーブル席へ。待っている間にコップに水を入れ、しょうがをする。この店は言わば半セルフ式で、某店のようにネギを自分で刻んだり、うどん玉を湯がいたりする必要はないが、ごく当たり前の作法として、しょうがは客自らがすりおろす。おろしたてのしょうがの香気に、否が応にも期待が膨らむ。

  ほどなく名前を呼ばれ「はーい」と返事をすると、お待ちかねのうどんが登場。まずは「ひやあつ」から。冷たい麺に熱いダシをかけたりしたら、うどんがぬるくなるのではないかと心配される向きもあろう。 しかしそれでいいのである。この「ひやあつ」は、茹でたてを冷水でしめた麺のコシの強さと、イリコの香りがプーンと立ち上る熱いダシの旨みとが一度に味わえる逸品。特に店主がこだわる昔ながらの手切り麺は、少し太めながらも独特のねじれが入り、噛めば押し返してくるシコシコした弾力とつるつるした食感に心地良いアクセントを与えている。これを一度食べたら、機械切りの均等な麺が如何にもつまらなくなってしまう。薬味のネギ以外、余分なものは一切入れず、麺とダシこれのみ。本当にたったこれだけで、骨の髄まで満足させてくれる―これが讃岐うどんなのだ。

  一段落したところで、「しゅうゆかけ」に突入。先程のしょうがを入れ、生じょうゆをまわしかけていただく。こちらはダシがない分、麺のおいしさがダイレクトに味わえる。コシはかなり強く、噛むと口の中でうどんが飛び跳ねるようだ。噛んでは跳ね、跳ねるうちにいつの間にか喉をとおってゆく、この不思議な感覚。「うどんは飲むもの」とはまさにこれなり。あっと言う間に胃に収め、気づけば暖簾が片付けられている。時は既に15時過ぎ。「まだうどんありますか?」「あー最後の1つや」「じゃ、あつあつで」。即座に追加注文、めでたく最後の客となり、遅い昼食をとるお店の方々と共に、あつあつのうどんに舌鼓を打ったのであった。
                                   好川佐苗(日本近代文学・日本語教育)
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